(12)(ご出身はどこなん?)

松長 / 龍崎翔子

中学に上がる時に、東京の西側の街から京都に引っ越してきた。先生も生徒も皆、“芸人さん“のような話し方をすることに何より驚かされた。「ねえ、何で東京弁喋ってるん?」と友達に訊かれ、自分がスタンダードな日本語だと思って話しているイントネーションはこの京都中華思想の中ではあくまで東京風の訛りに過ぎないことを突きつけられ、世界地図がひっくり返ったような衝撃をうけたりもした。私が過ごした、京都の「ええとこの子」が集まるコミュニティの中では、京都生まれ京都育ちであることは当然で、親も代々京都人であればあるほど偉いし、家が御所に近ければ近いほど偉かった。

京都で“東京の子“としての学生生活をなんとか生き抜き、東京に出て“地方出身勢“としての大学生活を終えた後、不思議と私は京都に帰るための荷造りを始めていた。

東京での暮らしは悪くなかった。友達もたくさんいたし、恋人にもこの街で出会った。色々な大人に会ったりもした。タワマンの最上階で開催される、ミスコン出場者や若い起業家が集まるパーティーに参加したりもした。東京では、色々な人が私に話しかけてきた。「どれくらい調達してるの?」「君に興味持ってる人がいるから紹介したい」「いつか何か『面白いこと』できたらいいね!」….

いつからか、京都の暮らしが恋しかった。自転車でどこにでも行けて、誰も私に興味を持っていない街が。地に足をつけて、自分のやらなくてはいけないことに向き合える街が。そうして私は、卒業とともに京都に帰り、小さなアパートを借りて、そこをオフィスとして働き始めた。

丸太町の「木山」で、御池の「松長」で、祇園の「ぎをんせくめと」で、京都で身の上について訊かれるとき、今でも私の身体に緊張が走る。「京都人」でもなければ「学生さん」でもなく「観光客」でもない、宙ぶらりんの身辺情報。家は下京区の方でして、小さく宿業を営んでおりまして…と、後ろめたいこともないのに言い訳がましく自己紹介をする時間。でも、それがいいなと思っている。「あなたは一体何者なの?」という視線と問いに、自分自身が向き合い続けられる街が、京都なのだと思っている。

松長

・住所

・アクセス
・営業時間

・住所

京都市上京区出川通り御前東入東今小路町774

・アクセス

市営バス「上七軒」停留所から徒歩3分

・営業時間

17:00-翌2:00(月曜日定休)


京都府京都市中京区高倉通御池上る柊町589
市営地下鉄「烏丸御池」駅から徒歩4分
ランチ(金曜以外は要予約)11:30-14:00 / ディナー(要予約)18:00-23:00

龍崎翔子 / Shoko Ryuzaki

株式会社水星代表、ホテルプロデューサー。東京生まれ京都育ち。水瓶座。

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京都府京都市南区東九条南烏丸町36-19

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