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  (いつもの/特別な/普通の1杯。)

永正亭 / 福富優樹

OPA裏の従業員口の扉をいきおいよく開ける。三吉本店の看板のダニエル・ジョンストンが描いたような牛のイラストを横目に、ファミリーマートの横の細い路地をつっきって四条通に出る。交差点の信号が青だったらラッキー。赤だったらそのままアーケードを烏丸方面に駆けていく、あくまで早歩きで。お昼どきの四条通は平日とはいえなかなかの人通りで、ゆらゆらと身体をスライドさせながら一定のスピードは保ち続ける。目標タイムは3分以内。インを突くように寺町を下れば、すぐに永正亭ののぼりが見えてくる。
バンドが忙しくなってからも、無理をいってタワーレコードでの仕事は続けさせてもらっていた。平日の入れる日だけ、しかも朝10時から15時までという特別に短いシフトでは休憩時間が30分に設定されていて、毎回この30分を使ってタワレコが入っているOPAから永正亭までお蕎麦を食べに行くのがルーティンのようになっていたのだった。席につくと、おばちゃんがお茶を出すついでにいつものでええか?と聞いてくれて人見知りの僕は毎回同じような照れ方をしながらお願いします、と言う。あっという間にかけ蕎麦がテーブルに運ばれて、お出汁と茹でられた蕎麦とちょこんと載せられた柚子と葱の4つが混ざったちょっと完璧すぎるいい匂いに毎回同じように感動する。あっという間に出てくるから、という理由じゃなく僕はかけ蕎麦という食べ物を愛してる。育った石川のかけ蕎麦も好きだったけど、京都のかけ蕎麦はまた格別だ。シンプルでかつ立体的で香り高くてお腹があったまって、しかも大抵はそのお店でいちばんお値打ち価格だ。それはどこのかけ蕎麦も同じなんだけど、京都のかけ蕎麦は出汁の香りと旨味が段違いで、どこのお店で食べてもちゃんとした「料理」になっている。それが普通やで、みたいな感じがまたいい。
なんでもあるようなふうな東京にもないものはたくさんある。このかけ蕎麦がまさにそのひとつだ。なくてもいいのだ。”いつもの”がいつでも食べられなくなっても、それでもいつまで経っても、京都に”帰り”たくなるひとつの理由だから。

永正亭

・住所

・アクセス
・営業時間

・住所

京都府京都市下京区寺町通四条下る貞安前之町611

・アクセス

阪急京都線「京都河原町駅」より徒歩5分

・営業時間

11:00-19:00(水曜日定休)

京都府京都市下京区寺町通四条下る貞安前之町611
阪急京都線「京都河原町駅」より徒歩5分
11:00-19:00(水曜日定休)

福富 優樹 / Yuki Fukutomi

Homecomingsのギターと作詞を担当。大学入学を機に京都に引っ越し、大学の仲間とHomecomingsを結成。

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京都府京都市南区東九条南烏丸町36-19

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