(07)(寺を通り過ぎる)

相国寺 / 木村七音流

僕はこれから相国寺の話をするのだけれど、紹介者としてはあるまじく、この寺の宗派も建築様式も知らなければ、併設されているらしい美術館に入ったこともない。ソウコクジではなく、ショウコクジと読むのだということも最近知ったばかりだ。今更になって調べてみたら、金閣寺や銀閣寺も相国寺のサブ寺なのだという。どうやら相当格の高いお寺のようである。しかし、僕にとってそんなことは全く重要ではない。僕にとってここは「いつでも通り抜けできるいい感じの道」であり、それが何よりも大事なことなのだ。
相国寺は今出川の、御苑の上、同志社大学の隣にあるでっかい寺である。境内はちょっとした大学のキャンパスくらい広い。縦横に大きな石畳の通りが敷かれており、7-8m程あるえらく背の高い松が並び立つ庭の中に、それよりも大きなお堂たちがどっしりと静かに構えている。空が広く、ひらけていて風がとおる。威厳や緊張感を出すような演出は何もないのだけれど、ここには寺特有の水平的な空気と無時間的な静けさが流れていて、いつも少しだけ気持ちをしゃんとさせられる。
東京の設計事務所で働きながら疲弊しきって死にそうだった時、友人が京都に遊びにきなよと誘ってくれた。僕がつくなり彼は、散歩に行こう、と言って外へ連れ出した。烏丸通を少しくだって相国寺を通り、出町商店街を抜けて鴨川へでた。その散歩の途中、彼はほとんど何も言わなかったが、終わり際に一言「京都には、大きい時間が当たり前にあるから」といい、少し考えてから「大丈夫やって思えるやろ、何があっても」と続けた。自分のスケールを遥かに超えたでっかい時間が、日常の傍らに横たわっていること。そういう場所をただ当たり前のように通り過ぎること。それは僕にとってとても重要なことに思えた。
相国寺は24時間誰でも通り抜けることができるようになっていて、チャリに乗った地元のおばちゃんや部活終わりの大学生が行き交う。僕は彼と散歩をした翌日には京都に来ることを心に決めていた。今ではこの道も僕のいつもの散歩ルートになっている。

相国寺

・住所

・アクセス
・営業時間

・住所

京都市上京区出川通り御前東入東今小路町774

・アクセス

市営バス「上七軒」停留所から徒歩3分

・営業時間

17:00-翌2:00(月曜日定休)

京都府京都市上京区今出川通烏丸東入相国寺門前町701
市営地下鉄「今出川」駅徒歩8分
10:00-16:00

木村 七音流 / Nile Kimura

1995年滋賀県生まれ。 株式会社水星 ホテルプロデューサー。大学で上京し、建築設計事務所を経て、株式会社水星に入社を機に京都に戻る。代表の龍崎とは高校大学の同級生。

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