(09)(餃子、紫陽花、新生活)

三宝の餃子 / 堤大樹

もし、くるりの「ばらのはな」で歌われたのが「ジンジャーエール」ではなく「餃子」であったのなら、これほどのあま酸っぱさを感じる楽曲になっただろうか。ならへんやろな。お皿にデンっと盛られたあちあちで大ぶりの餃子は、そんなおセンチな感傷にひたる時間を与えてくれない。にんにくの香りがダイレクトに脳に響く。肉汁は胃袋に「もっと」と訴えかける。餃子は秒で私たちを動物にする。たとえそれが24時をすぎていても。
しょうもないことを考えてしまうのは、引っ越しと荷解きの疲れのせいにしたい。台北での暮らしを経て、生活の拠点は紫野に落ち着いた。実に18年ぶりに『三宝の餃子』を食べている。立命館に通っていたので、今出川通りは生活圏だ。今も昔も周囲では一番最後に灯りが消える店ではないか。スタジオやライブ終わりに何度か後輩と食べに来たことがある。金はなかったが、夜遅くに乱暴をする贅沢は、その分一日の終わりを特別なものにした。
「餃子がこんな味だったか」は最後まで思い出せないままだったと正直に記す。記憶の引き出しを開けてみれば、残っていたのは一緒に卓を囲ったあいつらの顔くらいだったのだ。そもそも味などどこにも留めていなかった。そろそろ平野神社の紫陽花は、夜露に濡れているくらいだろうか。寄ってみるのも悪くない。あの頃、なにを急いで必死に自転車を漕いでいたのかもう覚えてはいない。暗闇を走る理由はもう見つけられへんのかもしれんなあ。

三宝の餃子

・住所

・アクセス
・営業時間

・住所

京都市上京区出川通り御前東入東今小路町774

・アクセス

市営バス「上七軒」停留所から徒歩3分

・営業時間

17:00-翌2:00(月曜日定休)

京都市上京区出川通り御前東入東今小路町774
市営バス「上七軒」停留所から徒歩3分
17:00-翌2:00(月曜日定休)

堤大樹 / Daiki Tsutsumi 

Eat, Play, Sleep inc. クリエイティブディレクター / ANTENNA編集者。

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